大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 平成10年(ク)379号 決定

抗告人

熊木俊明

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人の抗告理由について

民訴法三三七条に規定する許可抗告制度は、法令解釈の統一を図ることを目的として、高等裁判所の決定及び命令のうち一定のものに対し、右裁判に最高裁判所の判例と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項が含まれる場合に、高等裁判所の許可決定により、最高裁判所に特に抗告をすることができることとしたものである。

論旨は、その一部において、同法三三七条が抗告許可申立ての対象とされる裁判に法令の解釈に関する重要な事項が含まれるか否かの判断を高等裁判所にさせることとしているのは、憲法三二条に違反し、ひいては三一条にも違反すると主張する。しかしながら、下級裁判所のした裁判に対して最高裁判所に抗告をすることを許すか否かは、審級制度の問題であって、憲法が八一条の規定するところを除いてはこれをすべて立法の適宜に定めるところにゆだねていると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日大法廷判決・刑集二巻三号一七五頁、最高裁昭和二四年(ク)第一五号同年七月二二日大法廷決定・裁判集民事二号四六七頁、最高裁昭和二七年(テ)第六号同二九年一〇月一三日大法廷判決・民集八巻一〇号一八四六頁)。その趣旨に徴すると、民訴法三三七条が憲法三一条、三二条に違反するものでないことは明らかである。右論旨は採用することができない。

その余の論旨は、違憲をいう部分もあるが、その実質は、立法の当否をいうか、又は原決定の単なる法令違背を主張するものにすぎない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官千種秀夫 裁判官園部逸夫 裁判官尾崎行信 裁判官元原利文 裁判官金谷利廣)

抗告人の抗告理由

本件裁判は憲法第三一条および憲法三二条違反の適正手続きによる裁判を受けることを侵害され、本件請求の趣旨の裁判を求める次第である。

一 民事訴訟第三三七条は、決定判例の最高裁判所での統一を目的として制定された。このため、最高裁判所の判例違反の場合は無条件に抗告許可を認めるように法が施行された(判決に限定していない)。つまり、最高裁判所の判例がある場合に抗告不許可は正当な判断となる。しかし、本件では新法施行後まもなくの申し立てであり、最高裁判所の統一「決定」判例はないと推定でき、本件決定でも最高裁判所判例を示していない。この統一判例がない場合、一般的判断を争点とした抗告許可の申し立ては許可すべきである。この許可抗告の手続きは上告受理の申し立てを準用すると定められており、その判断の主体が上告受理と異なる原審にあることは、憲法第三二条に違反する。もし、原審で許可の裁量ができるのであれば、上告受理を準用することなく、別途憲法第三一条による法的手続きを定めるべきである。

二 〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例